工房秘話

彼女の色

2013年3月27日

彼女とはじめて出会ったのは4ヶ月前。
andu ametの職人の採用試験でのこと。

1時間以上遅刻してきたことをわびもせず、
何かを聞いても、ただyesかnoしかいわない。
一切笑顔をみせず、少し陰気な感じがして、
実は、はじめは断ろうと思った。
しかし実技試験になり、よそみもせず、真剣に作業する姿をみて、
「彼女、結構もの作りが好きなのかも」と気がづいた。

小さな身体に障害を背負っていたことは見てすぐ分かっていた。
もしかして、そのせいで相手を警戒する癖がついているのかもしれない。
この国で、障害とともに生きるのは並大抵のことではなかっただろう。
働きながら環境に慣れてもらえば、だんだん気をゆるしてくれるかもしれない。
そう考え直して、採用することに決めた。

最初の3ヶ月はトレーニング期間。 日本で販売するアイテムには関わらず、
ひたすら練習をつむ。
手縫いの経験の長い先輩を、面倒見兼指導係として彼女につけた。
andu ametの職人は若い人が多い。
ラジオやCDをかけたり、冗談を言い合ったりして笑顔が絶えない職場だ。
しかし3ヶ月間、彼女だけはは全く笑わなかった。

トレーニング期間終了後も縫いはまだまだだったが、
細かい仕事が丁寧で、色のセンスがよかった。
andu ametのデザインの重要な箇所である、モザイクカラーの色並びを彼女に任せることにした。

ある日、彼女のモザイクカラーがほどこされたバッグが、
日本で売られている写真をみせて
「日本のお客さんたち、皆この色がすごくきれいだって、喜んでいたよ」
といったとき、はじめてちょっとだけ笑ってくれた。
口もとはへの字のまま、でも目もとがニコーって、
明らかに、すごくうれしそうだった。

それからさらに一月たち、彼女がandu ametのメンバーに加わってからもうすぐ4ヶ月になる。
自分から積極的になにかを話すことこそないけれど
今では私やスタッフにもおずおずと挨拶をしてくれたり、
だれかが冗談を言ったときに、周囲に気付かれないように、密かに微笑んだりするようになっていた。

カラモア- 現地の言葉で「彼女の色」という名前の少女は
今日も寡黙に、色とりどりのレザーを積み重ねている。

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